【第2回】抹茶と紅茶が奏でる、彩り鮮やかな香味の競演

羽二重餅＜抹茶＞　×　紅茶＜ダージリン＞

知っている紅茶の種類を尋ねると、もっともよく挙げられるのが「ダージリン」。そして、好きな紅茶の種類を尋ねると、同様に「ダージリン」という声が多く聞かれます。高貴な香りを放つダージリンの繊細な香味は、特に私たち日本人が好む味わいを持つ紅茶といえましょう。

紅茶は基本的に産地で分類されます。「ダージリン」、「アッサム」、「セイロン」など、紅茶の名前はそれぞれの産地を示しているものが分類の基本となっており、各産地によって香味の特徴が異なってきます。

「ダージリン」は、世界最大の紅茶産地国であるインドの北東部にある人口約10万人の町。ヒマラヤ山麓に位置し、登山家たちの拠点にもなる高山地帯です。町の中心を走る蒸気機関車「トイ・トレイン」は、「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」の名でユネスコの世界遺産にも登録されている観光スポットでもあります。

19世紀半ば、この地はイギリス人によって避暑地として開発されました。その途中で、この地形や気候が良質な紅茶の栽培に適していることを知り、イギリス人によって茶園開拓が行われました。世界的にも紅茶栽培の歴史が古い伝統的な紅茶産地です。

町の中心部の標高は約2100メートルという高地のダージリンで栽培される紅茶は、そびえ立つ山のように立ち上る高貴で上品な香りが特徴。水色（スイショク：カップに注がれた紅茶液の色のこと）は淡く、一見すると薄味のように見えますが、やさしさの中に強い線を持ち合わせた味わいがあります。

そんなダージリンと一緒に味わいたい羽二重餅は、「抹茶」。鮮やかな黄緑色が若葉のシーズンを思わせ、視覚から季節の彩りを感じる色合いです。抹茶風味というと「和テイスト」を想像しますが、たっぷりの生クリームが軽やかに舌の上を転がり、やさしくふわっとした食感に思わず笑みがこぼれてしまいそう。

抹茶は緑茶の一種で、もともとは紅茶も緑茶も同じ茶の木から作られるため、抹茶と紅茶は親戚関係にあるといってもいいでしょう。生産や喫茶の歴史においても、緑茶のほうが紅茶よりはるかに古く、主な栽培地域も異なりますが、こうして時代を超え「ティータイム」という場面でそれぞれの持ち味豊かに再会するとは、なんとも神秘的なものを感じます。

ダージリンは数ある紅茶の中でも、もともとの品種としても緑茶と共通点があるため、和菓子とは合わせやすい味わいです。しかし、いれ方によっては渋みが強く出てしまうことがあるため注意が必要です。紅茶をいれるときの最大のポイントは、「ボコボコと泡が出ているような沸騰しているお湯」を使うこと。緑茶の場合は、湯冷まししたお湯を用い、旨味成分であるテアニン（アミノ酸の一種）を引き出すことによって味わいのバランスを整えますが、紅茶の場合は高温の熱湯で含有成分をしっかり引き出すことが重要。この点に気をつけるだけでも、紅茶の味わいはキレと深みを増し、香り豊かなものとなります。

ダージリンの立ち上る香りと繊細な味わいをピュアに味わうためには、ストレートがおすすめ。産地から届く紅茶本来の味わいが、羽二重餅に込められたひとつひとつの素材のハーモニーを心地よく奏で、極上のティータイムへと誘ってくれます。

味わうときは、まず紅茶の香りを楽しみ、口に含んでみましょう。そして、羽二重餅のやわらかな食感を味わい、ふたたび紅茶を口に含みます。最初に口にしたときとは違った紅茶の味わいを感じるに違いありません。紅茶、羽二重餅、紅茶、羽二重餅・・・と折り重なる豊かな味わいの広がりこそが、「羽二重餅でティータイム」の最大の魅力なのだと感じます。