【最終回】芳醇なコクがほっこりカボチャに溶け合うまろやかティータイム
羽二重餅<カボチャ> × 紅茶<アッサム>
カボチャ、栗、さつまいもなどのような甘みのある野菜は、和洋問わずスイーツの食材として大人気です。生まれながらに持つ自然の甘みは、とてもやさしくまろやかに口の中に広がり、懐かしさと新しさを感じさせてくれます。
これまで紹介してきた山田桂月堂の羽二重餅、抹茶やいちごクリーム、黒蜜くるみなどの定番のほか、季節のフルーツを使用したものなど実にバラエティ豊かですが、やさしい甘みのカボチャの羽二重餅は、口に含むとあたたかい気分になれる味わいで、寒い冬のシーズンにピッタリの味わい。ひんやりスイーツなのに、口の中に広がる甘みとコクは、心をポカポカにしてくれるやさしさに溢れています。
そんなカボチャの羽二重餅と一緒に味わいたいのは、インドの紅茶「アッサム」。インドは、世界最大の紅茶産地として有名ですが、その中でももっとも生産量が多いのがこのアッサムです。
インド紅茶というと有名なのが、ダージリン。ダージリンもアッサムも産地の名前です。繊細な味わいと豊かに立ち上る高貴な香りが特徴のダージリンとは対照的に、アッサムはコクのあるどっしりとした味わいが特徴で、まろやかな甘みを感じる味わいはミルクとの相性も抜群。カップに注がれた紅茶液の色も濃く赤みを帯びており、強い味わいの紅茶であることが見た目からも分かるのですが、渋みはそれほど強くありません。むしろ、まろやかさのほうが印象に残ることでしょう。
アッサム紅茶は、通常ミルクティーで飲むことをお勧めしていますが、カボチャの羽二重餅とのハーモニーを楽しむのであれば、何も加えずぜひストレートで飲んでいただくことをお勧めします。アッサムの持つあたたかみを帯びた芳醇な香味が、カボチャの味わいとクリームに絶妙に溶け合い、どこか懐かしく、でも新しい感覚の味わいの世界が広がっていきます。だから、ティータイムは、ゆっくりゆっくり味わいたい。少しずつ少しずつ、交互に味わうことで、この溶け合うまろやかさが、やわらかく広がっていくのを感じることができるはず。この感覚こそが、スイーツと紅茶の相性を考えながら出会う、ティータイム最高のときめきの瞬間なのかもしれません。
冒頭に述べたカボチャ、栗、さつまいもなどのような甘みのある野菜を使用したスイーツとアッサム紅茶の相性は抜群なので、この機会にアッサム紅茶をぜひ覚えておくと、これからティータイムのときのスイーツと紅茶の組み合わせを考えるときに便利です。まろやかさを特長としたスイーツに溶け合うアッサム紅茶の柔らかくも弾力性のあるコクは、スイーツのまろやかさを、口の中でより質のいい味わいへと導いてくれます。この組み合わせを味わうと、スイーツにあわせて紅茶を選ぶことの楽しさや意義の深さを実感することでしょう。
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バックナンバー
【第1回】伯爵が愛した紅茶が奏でる味のグラデーション
【第2回】抹茶と紅茶が奏でる、彩り鮮やかな香味の競演
【第3回】ふわッ、かりッ、じわッ、口の中で広がる味の芸術品
【第4回】見た目も味も可愛すぎ!笑顔が生まれる絶妙な相性です
【第5回】 「えだまめのまち大館」が香るティータイム
【第6回】上品な味わいが、紅茶と溶けあうときめきのティータイム
【第7回】爽快な香味の紅茶がマンゴーの甘みを引き出す絶妙コンビ
斉藤由美(英国紅茶研究家/ライター)
日本紅茶協会認定ティーインストラクター、ティーアドバイザー。
大学卒業後、ブルックボンド紅茶に勤務。その後、ユニリーバでリプトン紅茶のPRを担当、20年以上にわたり紅茶メーカー勤務の経験を持つ。
これまで多数の紅茶セミナー、講演、テレビ出演、ラジオ出演、雑誌、新聞などでも活躍。現在は秋田県大館市の自宅で紅茶レッスン「イギリス時間、紅茶時間」を主宰するほか、秋田カルチャースクール、ヨークカルチャーセンター弘前で英国紅茶講座を担当している。
主なテレビ出演:「ためしてガッテン」(NHK)、「王様のブランチ」(TBS)他。四冊目の著書「しあわせ紅茶時間」(日本文芸社)を2015年10月に出版、好評発売中。
秋田県大館市在住。
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